札幌は大雪です
みなさんこんにちは。なりっぴです。ここ数日、札幌は大雪に見舞われていますね。
この大雪で新千歳空港を発着する便にも多数の遅れやキャンセルなどが発生、大幅に運航が乱れているとのこと。
〔新千歳空港〕降雪による滑走路閉鎖は解除、発着便に欠航や遅延など影響続く(10日18時45分現在) (レスキューナウニュース) - Yahoo!ニュース
〔新千歳空港〕降雪のため断続的に滑走路閉鎖、発着便に欠航や遅延など影響(11日11時半現在) (レスキューナウニュース) - Yahoo!ニュース
私も昨日Flightradar24をしばらく見ていましたが、「行ける!」と思って新千歳に向かった便が、除雪のための滑走路閉鎖でたくさん引き返してきているみたいですね。
(片方の滑走路が閉鎖されている図)
(上空で待機していた便がやむなく引き返している図)(上の滑走路閉鎖のときより1時間程度前)
(Flightradar24より)
さてこんなとき、何が起こっているのか?どんなときに引き返し・ダイバートが発生するのか?条件ごとに軽くまとめてみました(軽くまとめようと思って書き始めましたが、だいぶ長くなっちゃいました^^;)。
※おことわり
この記事は著者なりっぴの経験と主観に基づきまとめたものであり、航空会社の見解を示すものではありません。
ダイバートとは?
そもそもタイトルにあるダイバートってなんぞや?ってことですよね。
ダイバート(英語: divert)とは、航空機の運航において、当初の目的地以外の空港などに着陸すること。
つまり、いったん離陸した飛行機が、出発地でもなく目的地でもない、第3の空港に着陸することです。ちなみに出発地に着陸するのは単なる「引き返し」です。
たまにツイッターとかでダイバー「ド」と書いている人を見かけますが、鳥の「バード」や、「ダイハード」あたりに引きずられちゃったんでしょうか?^^;
天気が悪くて空港に安全に着陸できない場合や、機材の故障といった緊急事態が発生した場合など、最寄りの空港に着陸することがあります。それを航空用語でダイバートと言うわけですね。
この記事では運航に使用される航空機のことを「機材」と呼びます。
引き返し・ダイバートするのはどんなとき?
悪天候
近年は気象予報技術の発達により、運航に影響が出そうな大雪・強風・台風・雷雨などは事前にある程度予測できるようになってきました。
従って、台風が来てる!とか明日は大雪だ!みたいなときは、航空会社は自社の便を前日のうちに欠航にしたり、出発時間を早めたり遅らせたりすることで、悪天候を回避してお客さんへの影響を最小限に抑えようとするわけですね。
それでも、突発的な悪天候や、予想を大きく上回る悪天候だった場合など、やむを得ず他の空港に向かうこともあります。
みなさんの記憶にも新しいかもしれませんが、今年2016年の台風9号では関東地方に非常に強い風が吹きました。西武線が脱線したのもこの台風のときです。
(台風の場合、雨というよりは主に風、しかも強い横風や突風によって着陸できないことの方が多いです)
強風の影響で成田空港では管制塔が大きく揺れて管制官が避難してしまったため、滑走路の運用ができず多数の便がダイバート!という事態も発生。こんなときはさすがの航空会社も予想できませんよね……ちょうど成田に向かっていた便にとってはとんだ災難でした。
成田空港、台風9号の影響で8月22日の運用時間は25時30分まで延長 | FlyTeam ニュース
(ちょうどその日、ハワイから来て茨城の方まで回されてぐるぐる飛んでいたANA機が成田に降りるところです)
他には濃霧によっても航空機は着陸できません。
着陸するときに滑走路が目視できないと基本的には着陸をやり直すことになります(滑走路の無線設備やパイロットの資格によって、ここまで見えたら着陸できるとする高度には差があります)。
濃霧が発生しやすい空港には、視程が低くても着陸できるような設備が設置されていますが、航空機にそれに対応する装備があり、なおかつパイロットがそれに対応する資格を持っている必要があります。
条件はさまざまですが、霧がでやすい空港に向かう便が引き返すことも多々あります。
<視程が低くても着陸できるような設備が設置されている空港>
以下に挙げられている空港は、季節によっては視程が低くなりやすいため、「高カテゴリーILS」が整備されています。
成田空港でも、2本あるうちの長い方の滑走路、A滑走路に南向きに着陸するときにこの設備を利用して着陸することができます。(成田では夏場の早朝に霧が出やすいです)
ILSの話もまたいずれ。
カテゴリー区分 実施箇所 CAT-II 東京34RILS、中部18ILS、関西06L/06R/24R/24LILS CAT-IIIb 新千歳19RILS、釧路17ILS、青森24ILS、成田16RILS、中部36ILS、広島10ILS、熊本07ILS
空港(滑走路)の閉鎖
空港や滑走路が閉鎖されるのにもいろいろな理由があります。
当然上に書いたような雪による除雪もその一つですが、他にも航空機のトラブルや、滑走路の緊急補修(日本ではほとんどありませんが、海外でたまに)、火山噴火に伴う降灰でも閉鎖されることがあります。
滑走路が複数ある空港だと、何らかの理由で1本が閉鎖されても残りの滑走路で運用を続けることが可能ですが、1本しかないと空港に着陸することができず他の空港に向かうことに……
たまーにですが、小型機が胴体着陸して滑走路閉鎖、などのニュースもあります。
www.sankei.com
また、航空機が滑走路上で立ち往生してしまったり、火災が発生してしまった場合、緊急車両などが空港中を走るため、他の滑走路もまとめて閉鎖となることもあります。
今年の話ですが、大韓航空機が羽田で火災を起こし、乗員乗客が全て滑走路上に脱出し、消火作業が行われるという事態が発生しました。
www.asahi.com
国土交通省東京空港事務所によると、羽田空港は27日午後、大韓航空機が停止しているC滑走路が閉鎖された。ほかの3本の滑走路も一時運用を見合わせたが、午後2時半過ぎにいずれも再開した。
大韓航空機出火で欠航相次ぐ 3万6千人に影響:朝日新聞デジタルより
このときは事故発生直後に全ての離発着が停止、少しして運用が再開されたようです。これが何らかの原因で閉鎖が長引くと(脱出したお客さんがあちこちに走って行ってしまい、全てのお客さんを集めきれていないとか)、到着便は全て上空で待機、それでも滑走路が再開されないと近くの他の空港にダイバート、ということになってしまいます。
他に厄介なのが、火山の噴火です。火山灰はガラス質の成分を含むため、航空機のエンジンに吸い込まれるとその熱で融け、エンジン内に付着し最悪エンジン停止という事態を引き起こします。そのため、世界的に火山灰を監視し、航空機の安全運航に必要な情報が提供されています。
東京VAAC | 業務概要
まさに一昨日の話ですが、ロシア極東部カムチャッカ半島にある火山が噴火、一時上空36,000フィートまで噴煙が上がったようで、北米→アジア方面行きの航空路(空にも決められた道があるのです)に大きく影響を与えました。
tass.com
当然その周辺を飛んでいる便は噴煙を迂回して飛行を続けたため、当初の想定では足りるはずだった燃料が足りなくなり10便程度が成田空港にダイバートしてきました。
(ダイバートしてきた便の例)
こうして航路上の火山が噴火してしまった場合もそうですし、空港近くの火山が噴火して空港に灰が降り積もってしまった場合にも運航ができないことになります。日本だと桜島の影響で鹿児島空港、阿蘇山の影響で熊本空港をそれぞれ発着する便が欠航になったりしますね。
海外では、インドネシアやマレーシアあたりは火山が多く、バリ島のデンパサール空港がたまに影響を受けている印象があります。噴火が収まるまで2,3日欠航が続くことも。
航空機自体のトラブル、機内でのトラブル
当然外部要因ではない、運航している航空機自身のトラブルで引き返しまたはダイバートすることもありえます。
例えば機材が故障した場合。国内線であれば運航距離が短いため、途中でトラブルが発生した場合でも目的地まで飛行できたり、出発空港に戻るにもそう遠くない場合が多いです。乗員と航空会社のオペレーション担当との協議にもなりますが、お客さんの利便性や代替機材の有無、その空港で機材の整備が可能かどうか、といった観点から着陸空港が決められることが多いです。
一方国際線の場合、トラブル発生の際に洋上やシベリア上空を飛行中!という事態も当然ありえます(特に日本発着の場合)。その場合には、引き返すのか、近くの(ただし自社が就航していないため地上での支援が得られない可能性がある、整備ができるか分からない)空港に着陸するのかといった難しい判断を迫られますが、当然緊急着陸することもあるということを頭の片隅に置いておきましょう。
一方、噂には聞いたことがあるけど実際に耳にしたことのある人は少ないであろうアナウンス、「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」。急患が発生した場合にも、どこかの空港に着陸して応急処置を行う必要が発生します。
他にも、考えたくはありませんが乗客の迷惑行為でダイバート、という最悪の事態も起こりえます。
www.asahi.com
引き返し・ダイバートが発生したら?
国内線
日本国内線であれば、一般的には目的地までの交通に関しては補償されるようです。
(ANA)
Q:国内線】搭乗予定のフライトで「悪天候のため、着陸できない場合は別の空港へ向かうか、出発空港に引き返すことがある」とアナウンスされました。別の空港へ向かった場合、目的地までの地上交通費は負担されますか。また、出発空港に戻ってきた場合、搭乗済みの航空券はどうなりますか。
A:別の空港に着いた場合、目的地までの地上交通機関を負担いたします。また、出発空港に戻ってきた場合は特別な対応としてご予約日から計算して30日以内の変更が可能です。もしくは払い戻しが可能で、その際の払い戻しに伴う手数料は適用しません。
Q:搭乗予定の便が「悪天候のため、着陸できない場合は別の空港へ向かうか、出発空港に引き返すことがあります」とアナウンスが流れました。別の空港へ向かった場合の取り扱いはどうなりますか。また、出発空港に戻った場合、搭乗済みの航空券の取り扱いはどうなりますか。
A:◆別の空港に到着した場合
JALグループ代替便、または他輸送機関で目的地までの振替手段をご案内いたします。
他輸送機関での振替の場合は、目的地までの地上交通費を負担いたします。◆出発空港に戻った場合
予約搭乗日の翌日から起算して30日間、有効期間を延長しご利用いただけます。
または、取消手数料・払戻手数料はいただかずに払い戻しが可能です。
最近成田から多数飛んでいる、LCCはどうでしょう?
ジェットスターはQ&Aが見つけられず……運送約款がありました。
9.2 やむを得ない事情による変更
やむを得ない事情(戦争、内紛、火災、洪水、悪天候、天災、当局による措置、当社の管理や制御が及ばない機体、機械や設備の事故や障害、ストライキを含むがこれらに限らない)によって大幅な遅延又は欠航が生じた場合、お客様が搭乗手続済みか否かを問わず、当社はお客様がお客様の目的地に到着できるよう当社の運航する空席のある次の便への振り替え又は運賃の払戻をいたします。しかし、法律で要求されない限り、当社は、その遅延又は欠航の結果お客様に生じる可能性のある費用の支払いについては責任を負いません。
ジェットスター・ジャパン株式会社 運送約款 | ジェットスター
とあるので、最低限目的地に着くように自社便に乗せてくれるだけということですね。
ただし、ダイバートした場合については書いていませんが、調べてみる限りでは、
・乗客を降ろさず出発地に戻った
ameblo.jp
・運航を打ち切り、目的地までの交通費を補填してくれた
MI DESTINO → BLOG:まさかのダイバートその後
パターンがあるようでなんとも……ダイバートしたけれども本来の目的地まで飛行したパターンは見つけられず。
LCCの場合は特に少ない機材でやりくりをしているため、後ろの便に影響が出ないように(乗員のスケジュール等も考えて)運航が決定されるようです。
以上のように、基本的には現地までの費用などは補償されると考えて差し支えないです。ただし、当日中にたどり着くためには運と決断力が必要となるかもしれません……
国際線
一方の国際線、特に長距離国際線の場合、降りる可能性がある空港の選択肢も多岐に渡ります。機材故障で着陸した先で整備ができればいいのですが、たいていは日本から整備士が行き(もしくは現地を拠点とする航空会社に整備の委託をしている場合はそのまま直る場合も)、部品を取り寄せ、整備して……ということに。その会社が定期就航している空港であれば、次の日の便に乗せてもらえるなど救済が受けられることが多いです。
機材の故障ではなく、急患や機内トラブルだった場合は、燃料を給油した後運航を継続できる可能性が高いと思います。
また、単なる引き返しの場合は、予備の機材(ともちろんそれを運航できる乗員も)があればそれを使用して運航できる場合も。
この場合に注意したいのが、いわゆる「クルーレスト」。あまり日系の会社ではありませんが、特に米系の会社だと法律で乗務員の拘束時間が決まっています。そのため、引き返したりダイバートが発生するとクルーの拘束時間切れでそこで運航終了(;ω;)ということも。
「flight crew time out」で検索すると主にアメリカだと思いますが阿鼻叫喚の口コミが多数ヒットします。
成田から出発するのであれば、やはり安心なのはANA/JALの2社かなと思います。
もし万が一引き返しなどのトラブルが発生したとしても、2社とも成田を拠点としているため予備の機材をやりくりして出発できる可能性が高いです。当然乗員の都合もつかなければダメですが。
でも逆に言うと、現地から帰って来られる率を高めるためには現地を拠点とする会社を利用しろってことになっちゃいますよね……
ただ日本の大手2社はそれぞれアライアンスに加盟しており、海外の航空会社とそれぞれ提携していますので、よほどのことがない限り他社への振り替えなどを受けられるかと思います。
まとめ
飛行機に乗るときには、可能性が少ないとはいえ様々なトラブルは起こりえます(他の乗り物でもそうですよね?)。
トラブルの内容が天気か?(良くなる可能性があるか?)、故障か?(飛行機自体がすぐには飛べないのか?)などによってその後の再運航の可能性の判断がつきやすいかもしれません。
<まとめ>
・悪天候→ 天候が回復すれば飛べる
(その後の機材繰りのためや、乗員の都合による欠航があることも)
・機材故障→ 予備の機材・乗員の手配がつけば飛べる
(その会社の便が他にないと、欠航になる可能性大)
・機内トラブル→ 解消すれば飛べる可能性大
(乗員の休憩・給油が必要となることも)
ただし、いずれにしても航空会社の指示に従って行動してください。
天気の話からすっかり長くなってしまいました。前回の記事の次回予告とは全然違いますね笑
それでは。