デルタ航空、大韓航空とJV開始
日本に乗り入れているアメリカの3大キャリアのひとつ、デルタ航空が大韓航空とのJV事業を展開する覚書に調印し、今後太平洋路線でJVを実施するようです。
航空業界におけるJVとは?
JV=ジョイントベンチャーとは、複数の会社が一体となって共同事業を行うことです。
日本の航空会社では、JALがワンワールドに加盟する数社と、ANAがスターアライアンスに加盟する数社とそれぞれJVを組んでいます。
JVを実施すると、お互いの座席を自由に販売できます。
例えば、JALのサイトで成田=ロサンゼルスを検索すると、JVを実施しているアメリカン航空の便も選べます。
アメリカン航空のサイトでも、JALの運航便を選べます。
ここで重要なのが、どちらが売っても同じ日・便なら同じ価格になるということ。
JV各社で共同運賃を設定し、販売しているためです。
IBの欧州線共同事業参加にともない、JALとBA、AY、IBは、日本発ヨーロッパ行き運賃を共通設定し、2016年9月21日から販売を開始します(一部運賃を除く)。
JAL企業サイト - プレスリリース - 欧州線共同事業、東京=マドリード線にてコードシェア実施 日本=欧州間にて4社の共同運賃を設定
つまり航空会社のいうJVとは、対象となる路線全ての座席をJVに参加する全ての会社で共同で販売し、その収益を各社で分配するというものです。
いわゆるコードシェア、共同運航は、A社の便にB社の便名もつけて、その便の座席の一部をB社が販売するというものです。
JVはコードシェアとは異なり、さらに踏み込んで共同で事業を行うというものです。ある種の運命共同体ですね。
日本の航空会社のJV
日本航空(JAL)
全日空(ANA)
日本の2社は、それぞれ同じアライアンスの各社と北米・欧州線それぞれでJVを実施しています。
デルタは日本国内に手を広げたいが…
デルタ航空は長年成田空港をハブとして北米・アジア間の乗り継ぎ客を取り込んできました。以遠権を行使して、日本からアジアの各地に路線を開設し自社間の便で乗り継ぎできるようにしてきました。
しかし、デルタ航空はスカイチームに加盟の会社ですから、日本にはパートナーがいません。自社で全部頑張らなくてはいけません。
デルタのマイルを貯めてデルタ航空をたくさん利用してもらおうと、日本国内の利用客を取り込むためのキャンペーンも実施しています。
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民事再生手続きをしたスカイマークへの支援も表明しました。結局最終的にはANAが支援することになりましたが…
デルタ航空、スカイマーク支援の真意を語る:日経ビジネスオンライン
デルタのマイルはスカイマークの航空券にも交換できます。
http://ja.delta.com/content/www/en_US/support/faqs/skymiles/skymark-airlines-award-travel-faqs.html
デルタ・大韓航空のJV
日本の隣の国に目を向ければ、大韓航空は同じスカイチーム加盟、しかも路線も豊富です。
https://www.koreanair.com/content/dam/koreanair/ja/Photos/event/201512/1216/map_16.12.05.pdfより
なんと46カ国132都市にソウルから就航しています。
デルタは大韓航空と手を組むことで、南北アメリカはデルタ航空がカバーし、太平洋を2社の路線で横断し、アジアは大韓航空で、という広大なネットワークができるわけです。
デルタ航空の成田減便
デルタ航空は2016年冬スケジュール(2016年10月)から、成田発着の5路線の運航を休止しました。
同時に羽田=ミネアポリスを新設したわけですが、デルタ航空は羽田からアジアへのネットワークを持っていませんから、日本発着の旅客の取り込みを狙っていると思います。
デルタ航空、「成田離れ・ソウルシフト」の理由 | 週刊東洋経済(ビジネス) | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
こちらの記事では、「新たなジャパンパッシングの始まりか」と締めくくっています。
ジャパンパッシングとは、1970年代からのジャパンバッシングになぞらえて、アメリカが中国を重視し日本を軽視し始めているのではないかという指摘(被害妄想?)ですね。
個人的には、昨年秋〜今年のJV発表までの一連の流れはジャパンパッシングではなく、正当な経済活動・マーケティングの結果ではないかと思います。
アメリカで国際線を運航する航空会社TOP3は、アメリカン、デルタ、ユナイテッドです。*7そのうちアメリカンとユナイテッドの2社はそれぞれ日本にパートナーがいるのに、デルタにはいないわけですから。デルタはスカイマークを支援することによって、同社が持つ羽田の枠を獲得することを目論みましたが、それは失敗しました。
成田空港のデルタ航空に対する扱い
デルタ航空が加盟するスカイチーム各社は、成田空港では第1ターミナル北ウイングを使用しています。
北ウイングは、2007年にNarita North Street(免税店街)がオープン、2012年にそれがリニューアルされたくらいで、特に新しい何かができたり、改装されたりということはなさそうです。
(参考)http://www.naa.jp/jp/issue/yakuwarigenjyo/2016/pdf/data_2.pdf
一方、スターアライアンスが使用する南ウイングは固定ゲートが増えたり、第2ターミナルは広い連絡通路が整備されたり、到着ロビーがリニューアルされたり。
たまたまかもしれませんが、成田空港的にはデルタ航空(スカイチーム)を冷遇しているのでは…?とも感じます。
第1北ではエールフランスはラウンジを閉めてしまったし、デルタも2つあるラウンジのうちのひとつを閉鎖するという噂も聞こえてきます。
デルタ航空は2014年に成田空港の格納庫(ハンガー)を1棟借りて、航空機の整備拠点である成田テクニカルオペレーションセンターを開設しました。
成田空港には、米国外で最大規模の100名を超える整備専門スタッフが勤務し、デルタ航空機の整備はもちろん、他航空会社の機材整備を請け負っているとのこと。
また、太平洋路線の運航支援を行う成田コントロールセンターも同所にあるようです。
デルタ航空、成田空港に「成田テクニカルオペレーションセンター」をオープン | Delta News Hub
この施設も、このままの流れだとソウルインチョン空港に移転するということにもなりかねません。
成田空港の国際線の便数では外国社では1位のデルタ航空。
日本の2社だけでなくデルタもちゃんと構ってあげないとスネてどこかに行っちゃうかもしれませんよ?(そうなったら日本の2社はターミナルが広く使えてラッキーとか思うかもしれませんが…)
*1:JAL企業サイト - プレスリリース - 日本航空とアメリカン航空、2011年4月1日より共同事業の開始を決定
*2:JAL企業サイト - プレスリリース - 欧州線共同事業、東京=マドリード線にてコードシェア実施 日本=欧州間にて4社の共同運賃を設定
*4:ANA,ユナイテッド航空が太平洋ネットワークでの貨物共同事業について国土交通省のATI認可を取得|プレスリリース|企業情報|ANA
*5:ANAとルフトハンザ ドイツ航空の日欧Joint Ventureに新たにスイス インターナショナル エアラインズとオーストリア航空が加わります|プレスリリース|企業情報|ANA
*6:オーストリア航空ともJVを組んでいましたが、残念ながらオーストリア航空は日本から撤退してしまいました
*7: