こんにちは、なりっぴです。
今回は日本の空港の図面などを見ることのできるサイトを紹介したいと思います。
下の「ICAO機種コード」に続くなかなかのマニアック記事だと自分では思うのですが、どうかお付き合いください。
- 米軍基地にダイバートする民間機
- パイロットは地図がないと空港に着陸できない
- チャートは誰でも見られる
- AIS JAPANでは何が見られるの?
- 登録してみよう
- 実際にチャートを見る
- 羽田空港にA380が就航する日は?
- 成田空港のA380適合スポットも分かる
- 水曜どうでしょうメンバーの名前が空に?
米軍基地にダイバートする民間機
先日、那覇空港の滑走路上で航空自衛隊のF15戦闘機が立ち往生、那覇空港に向かっていた飛行機が引き返したりダイバートしたりする事案が多数発生しました。
那覇空港で滑走路が閉鎖 空自F15、前輪外れ立ち往生:朝日新聞デジタル
那覇空港は民間機が多数発着する上に、陸海空全ての自衛隊が基地としていて、さらに海上保安庁の那覇航空基地もある日本有数の混雑空港です。
また、そのとき羽田から那覇に向かっていたJALの便が、近くの米軍嘉手納基地にダイバートするという珍しい事件も。
民間機が嘉手納基地に着陸 乗客189人が機内で待機 那覇空港閉鎖の影響 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
首都圏でも、羽田や成田への到着機が強風や雪で着陸できず、米軍横田基地にダイバートしたことも何度かあります。横田基地の場合、東日本大震災のときを除いてほぼ全てアメリカの航空会社だと思いますが、そうそうあることではありません。
春の嵐、成田着の3便が横田へダイバート | FlyTeam ニュース
ダイバートについてはこの記事もどうぞ。
パイロットは地図がないと空港に着陸できない
ただ、いくら目的地空港の滑走路が閉鎖されているからといって、近くにある他の空港にいきなり着陸できるかというとそうではありません。
近くにある他の空港にその航空会社の便が就航していれば、地上スタッフなどもいるためベストですが、そうでない場合もあります。
飛行機を運航するときは、飛行計画を提出する際にダイバート先となる代替空港も予め決めておきます。
例えば、成田に向かう便であれば羽田を代替空港にしたりします。
その分の燃料もちゃんと積んでいますし、代替空港のいろいろな図面(この記事ではチャートと呼びます)も持っています。
何かあれば、手元のチャートを確認してその空港に向かうことになります。
チャートは誰でも見られる
世界各国は自国のチャートをそれぞれ発行しています。
航空会社が使用しているチャートは、その各国が発行したものを民間の会社が独自に編集して販売しているものです。チャートを作成する会社としては、アメリカのJeppesen(ジェプセン)社が有名です。
Jeppesenチャートは上のようなスタイルで書かれています。
上のものは本当に航空機の運航に使われているものではなく、Jeppesen社のサイトで公開されている「お遊び」的なチャートで、よく見ると最近映画にもなった「ハドソン川の奇跡」のパロディになっています。
Jeppesen Special Edition Commemorative Charts — Jeppesen
こちらから全て見られますが、離陸後バードストライクにあってから、川に着水して乗客乗員全員が助かるまでの一連の奇跡的な状況が、実際のアプローチチャートっぽくなっています。
「MISSED APCH: None」っていうのがシャレが効いてます。
ただ、わざわざそのJeppesen社のチャートを買わなくても、日本のものであれば国土交通省が管轄する「AIS JAPAN」というサイトで誰でも見ることができます(ユーザー登録が必要です)。
AIS JAPANでは何が見られるの?
こちらでは、日本中の航空路の詳細、空港の図面、計器飛行に必要な各図面、NOTAM(ノータム:臨時に発出される全世界向けのお知らせのこと)などが見られます。
例えば、自衛隊のF15戦闘機が立ち往生した那覇空港には滑走路が何本あるんだろう?とか、嘉手納基地の滑走路の長さはどれくらいだろう?といったことなどが分かります。
そうです、日本にある飛行場であれば、米軍基地でも図面が公開されています。
アメリカ連邦航空局(FAA)が作成しているものなので、細かい情報は載っていませんが、基地の形状などは分かります。
また、日本上空には網の目のように飛行機が飛ぶためのルート:航空路が張り巡らされていることが分かる、下のようなチャートも見られます。
(図の右端は房総半島、左端は徳島県で、白い部分が陸地、たくさん引いてある線が航空路です)
登録してみよう
AIS JAPANはユーザー登録をしないと使えません。
トップページから、Create your accountをクリックして、
メールアドレスを入力してSubmitをクリック。
届いたメールのリンクをクリックし、必要事項を入力します。
これで登録は終わり。所属分野・所属機関名などは厳密に正しく入力しなくても登録できるとは思います。
実際にチャートを見る
チャートとひとくくりに言ってきましたが、このサイトでは大きく分けて「AIP」と「NOTAM」が見られます。
空港図面や航空路関係はAIPの方から見ます。
AIPのメニュー
上の画面でAIPをクリックすると、下の画面になります。AIPとは、Aeronautical Information Publicationの略で、日本語に訳すと航空路誌です。
現在有効なバージョンには「Current」欄に●印がついていますので、基本的にはそれを見ます。
●印がついている行の日付をクリックすると、下のようなメニューが出てきます。
メニュー上の「JP」をクリックすると一通りの項目は日本語訳で読むことができますが、主に図面類はPDFのみで提供されているため、英語版でないと読むことができません。
GENにはAIPの全てにまたがること、例えばこのAIPで使われる略語の説明(GEN2.2)や、国内の各空港の着陸料(GEN4.1)などが書いてあります。
ENRには航空機が上空を飛行する際に適用されるルールや、航空路の1本1本ごとの詳細などが書いてあります。
ADには日本国内の各空港ごとのルールや図面などが書いてあります。
日本全域のエンルートチャートを見る場合
英語版で、左メニューのENR 6 EN-ROUTE CHARTを選ぶとPDFファイルで見ることができます。
各空港の図面を見る場合
左メニューのAD 2 AERODROMESから、見たい空港をクリックします。基本的に図面は一番下の2.24という項目にあります。
下の画像は成田空港のものですが、Figure-01というのが空港の平面図です。
未来のバージョンと現在のバージョンとの差異を確認したい場合
これは実務者向けですが、AIPは基本的に28日おきにどんどん新しいものが発行されます。
次の有効日に有効となるバージョンと、現在のバージョンとでどこが新しくなったか確認したい場合、まず左メニューの上部のSelect Effective Dateというところから確認したいバージョンを選び、Goをクリックします。
そして、確認したいページの右上のShow Amendmentsにチェックを入れると、現在のバージョンとの差異がハイライト表示されるようになっています。
成田空港では、次回更新の3月2日版でRNAV経路のSIDに何らかの変更があるようだということが分かります。
羽田空港にA380が就航する日は?
最近ANAが成田=ホノルル線に導入を決めた、世界最大の旅客機A380。成田空港には現在タイ航空のみがA380を運航しており、もうすぐエミレーツ航空もA380を成田=ドバイ線に再投入予定です。
一方羽田空港は2017年の2月現在、定期便として就航しているA380はありません。
そこで羽田空港の該当箇所を見てみると、こう書かれています。
(2) A380-800 is prohibited from operating between 2100UTC and 1400UTC.
(3) When operating A380-800 between 1400UTC and 2100UTC, the aircraft weight restriction is imposed. (see RJTT AD2.23.7)
(2)A380は、6時から23時の間の運航を禁止する
(3)23時から6時の間にA380を運航するときは、航空機重量制限が課される
https://aisjapan.mlit.go.jp/より(訳:筆者)
ちなみに航空機重量制限とは、海に突き出たD滑走路へ向かうために橋を渡る上での重さ制限です。
つまり、現状の制限では深夜帯以外では羽田空港にA380の運航はそもそもできないことになっているということも書いてあります。
機体が大きいA380は翼から発生する後方乱気流も大きいので、それを避けるためにA380の後ろを飛ぶ飛行機は他の機種の後ろを飛ぶときよりも間隔を大きく取らなければなりません。
ただでさえ便数が多く過密スケジュールで運用されている羽田空港で、少しでも間隔を大きく設定しなければならないということは、その分1時間あたりの発着回数が減ってしまうことになります。
そのため、深夜帯のみの運航に制限されてしまっているのです。
成田空港のA380適合スポットも分かる
続いてもA380の話題ですが、A380は一昔前では考えられなかったほどの大きさがあります。従って、一昔前に設計された空港ではどこでも駐機できるというわけではありません。
成田空港では、2017年2月2日現在で全15箇所ですね。
(15,26,45,46,66,67,68,96,231,232,410,411,709,802,807)
チャートを見ると、そもそもA380が走行できるエリアにかなりの制限があることが分かります。(斜線で囲まれたエリアが走行できないエリア)
水曜どうでしょうメンバーの名前が空に?
先日話題になっていたこのツイート。
国交省の航空路情報みてたら3月2日に追加される北海道の航空路通報点に…
— もずれー (@yash006) 2017年1月19日
_人人人人人人人人人_
> どうでしょう斑 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄ pic.twitter.com/43l9Pgdzfe
こういうのもAIS JAPANのサイトから閲覧することができます。
ウェイポイントというのは緯度経度で決められた特定の1点を指し、航空機が広い空を飛ぶときに目的地にしたり、航空路と航空路の交差点になったりしています。
全世界で、ウェイポイントにはアルファベット5文字の名前を付けると決まっている上に、日本が管轄しているエリア内だけでもかなりの数のウェイポイントがあるために、どうしても名付けに限界が来ます。
そして今見てみたら1979個もありました。
単にアルファベット5文字というだけではなく、声に出して読める必要がありますからね。
もし仮にKMBJYとか適当に名付けたとしたら、管制官がパイロットにそこに向かう指示を出したくても発音できなければ通じないので…
上の、アルファベット順に並んでいる最後の2つを見ても、「ずんだ」に「ずわい」です。
ウェイポイントについてはまた余裕があったら記事を書きたいと思います。
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